京都の奥座敷・大原にある「宝泉院」では毎年4月下旬から5月のはじめ、柱と柱の空間を額に見立てた額縁庭園をライトアップする「春の夜灯り」が開催されます。その様は実に美しく、静かな里山を借景に心静かに眺めることができます。
京都大原といえば有名な三千院や寂光院など風情ある寺社があり、また京都漬物「しば漬」発祥の地でもあります。京都市内からは少し北にありますが季節を問わず大勢の観光客が訪れるところです。
そんな大原も日が暮れだすと、昼間大勢いた観光客が嘘のようにいなくなり、商店は閉まりひっそりとします。
青もみじが、始まろうとしていました。
大原・宝泉院の「春の夜灯り」。訪れたのはもう何回目でしょうか、今回初めて開催直後に訪れてみました。すると一部にはまだ桜が残り、落ちた花びらは水の流れにピンクの揺らめきを作っていました。
静まり返った道を進み、三千院を過ぎた先に宝泉院があります。
日が落ちたあと、まだその残照が大原の山々の稜線を形するころ、宝泉院に着きました。
さて、中に入ってみましょう。
「宝泉院」は本来「勝林院」の僧坊(僧や尼僧が生活する宿舎)。いくつかのお部屋とお庭を眺めながら奥へと進みます。
暮れかかったお庭はライトアップされ、また所どころ置かれたロウソクがゆらゆらと揺れていました。
そしてその先にある竹林の間からの眺め・・・
何度見てもこの光景にはため息が出ます。いや、そのため息さえもこの刹那の時を邪魔するようで躊躇われる。
見事。
そこに広がる額縁庭園。正面には樹齢700年といわれる五葉の松。宝泉院の庭園は「盤桓園(ばんかんえん)」といい「立ち去りがたい」という意味を持ちます。
まさに時を忘れ、いつまでも見ていたい幽玄なお庭でした。
最後に、ここ宝泉院には水琴窟があります。水琴窟とは日本庭園の装飾のひとつで、手水鉢近くの地中に空洞を掘り、そこに水滴を落下させた際に発せられる音の反響を楽しむ仕掛け。ここでは「理智不二」と名付けられた並んだ2つの水琴窟があります。理智不ニとは密教において、理(ことわり)と智(精神的なもの)の働きは分かちがたいという事を意味します。
とても美しい音色を録ってきました。お聞きください。
一級の観光地も夜ともなると人っ子ひとりおらず静まり返ります。
しかしその先には春の夜のほんのひと時、幽玄な額縁庭園を眺めることができます。
京都大原・宝泉院「春の夜灯り」。ぜひ足を向けて下さい。
夜灯り期間:2019年4月20日(土)から5月6日(月) 拝観受付時間:18時00分から20時40分 閉門は21時00分となります 拝観料:大人800円 宝泉院ホームページ http://www.hosenin.net/event/ |
※撮影機材
カメラ;SONY α6400
レンズ;SONY Vario-Tessar T*E16-70mm F4 ZA OSS